1週間経って今更という気もするのですが…
3月11日から14日まで、
昨年11月に国際人道法日本大会を制したこの東大チームが
日本代表として
国際人道法アジア太平洋大会に出場していました。

法学部でもなく、4月に初めて国際法のクラスに出て来た
3人の学部生。
9月入学なので4月は1年生でしたが、現在2年生です。

国際人道法模擬裁判のアジア太平洋大会は
大変な競争率で、
昨年まで日本代表チームは
準々決勝に進んだのが最高だったそうですが、
今年度の東大チームの強さは
何と言ってもチームワークと好奇心。
何度も練習をする中で
調べれば調べるほどまだまだ調べることもあり、
体系立てて理解していなければ必ずほころびが見えてしまう...
メモリアルを書いている際の議論の筋立てや
オーラルの練習の際のチームの姿勢は、
コメントやサポートをすればするほど
目が輝いて行き、
チームメートの中で誰かが出遅れれば
必ず他のメンバーがそれを補填したり
励ましたりしながら
プレッシャーの中、投げ出すことなく
諦めることなく
着実に前に進んで行くチームでした。

最後の2週間、特に模擬裁判が実際に始まってから
予選通過、準々決勝、準決勝と、
回を重ねるにつけ精度を増す議論と答弁は
コーチとして大変嬉しく
安心してみていられました。

結果は堂々の準優勝
弁論者の個人賞として、
Meiさんが2位、Chrisが3位、
そしてリサーチャーのTimを含めたチームの合作である
メモリアル(Prosecution)が3位という
素晴らしい成績を残しました。 

IHL HK Moot 2021 smallerICRC HK IHL Moot web2枚目の写真は@Red Cross Hong Kong

コーチとしては
メモリアルの段階からサポートし、
オーラルの練習は何度もして、
週末は日本初のマグニツキー法についての大きなシンポジウムと重なったり
家族の病気に付き添ったりもしたので
正直かなり疲弊し、
決勝が終わるころには
何を食べても味がするのは良く分かるのですが
何の味か脳が判断できないという初めての状況にもなりましたが、
それもチームが頑張っている姿を見ているからこそで、
文句なく大変誇らしいです。
準備と大会の過程で
チームがギリギリまで自分たちを追い込んでいき
そんな緊張状態の中でも
チームメートをお互い思いやり
助け合い続けることができたことに、
彼らの限りない可能性を感じるものでもありました。

今後どのような将来を選ぶとしても
目指す方を真っ直ぐに見据えて
諦めることなく進んで行ってほしいと思います。

と同時に、このチームのコーチをできたことは
私にとっても色々と学ぶところが多く、
教えたりコーチしたりすることは
自分も学ぶことなので
とてつもなく楽しいということを再確認するだけでなく、
私も自分で目指してる目標に向かって
諦めることなく進んで行かなければと気持ちを新たにしました。

私の方向性は、その時何をやっていても
確実に見据えているところがあります。
紆余曲折しても、
職や住む環境が変わっても変わらず、
高校生の時に思った疑問から続いています。
それは「どうして私たちはヘンリー8世の多くの奥様のことを学びながら、
戦争で命を落とした何十万人もの人のことは
歴史の教科書1行分で終わらせてしまうのだろう。」ということです。
世界にある、あらゆる不平等、
貧困の問題もそうですが、
私が実際に紛争中・紛争後の国で
人々と話すうちに一番ショックだったのは、
公平であるはずの司法でさえ
やはりお金持ちの人が良い弁護士を雇えれば勝つ可能性が高くなり、
力のある人の理解を得られなければ何も進まず、
弱い立場を搾取される人たちの救済は
かなりの覚悟をした心ある人たちの惜しみない努力によって
やっと達成できることもあるし、
頑張っても頑張っても期待を裏切られることもあるということです。
これを何とかしたいというのが原点で、
国際法(人権法、国際人道法、国際刑法、難民法など)は
私にとってはツールですから、
国連人権高等弁務官事務所で勤務していた際も、
東京大学にいる今も、
目指す方向は同じです。

模擬裁判に向け、限界まで自分たちを追い込んで
見事準優勝したチームをコーチしていて、
そんなことを考えてしまいました。

東京大学チーム、チーム03、
心からおめでとう。
これからの人生を
ぜひ自信を持って進んで行ってほしいと思います。