私が担当する授業の履修生のお一人から、
概ね以下のような質問をいただきました。

SDGsの話がありました。貧困をなくそうという目的がありここはもちろん納得できます。しかしそこからさらに進んで人や国の不平等をなくそうという目標があると思います。国連という機関はこれをまじの本気で目指しているのでしょうか?…世界が平等になり東南アジアの国々が日本と同じレベルの経済力を持ったら間違いなく日本は国際的な影響力を失う事になると思います。正直私はそんなの嫌ですし多くの日本人が嫌だと思います。具体的になりますが、現在日本政府は将来の日本人の労働人口減少に備え外国人労働者を積極的に受け入れており、彼らの多くは日本人が働きたくないような分野で働いています。これも日本が東南アジアの国々より経済力があるから可能になる事であり、経済の平等が実現したら誰も日本に来て辛い仕事しなくなります。つまり私はSDGs追求したら案外日本人の生活辛くなるし、民主主義がしっかり機能しているのであれば多くの日本人はこんなこと望まないですし、その結果政府もこんなこと推進しないと思います。ここで元国連職員だった先生に聞きたいのですが、日本が衰退してでも世界の国々の平等実現するべきだと思っていますか?

――

どの辺から回答しようかと思いましたが、下記のように回答しました。

――


ここにはいくつかのことが混在していると思います。

国家同士が経済的に対等になるということと、人間各個人が平等であること、さらには人間各個人の人権が守られるということは、すべて違うことです。国連は国家の集まりである以上、国家同士が経済的に対等になることを目指してはいないし、仮に目指そうという人がいても国家の集合体である以上無理だと思います。

国連が目指すのはそうではなく、あまりにひどく、絶対的で変えようのない貧困という状態から各個人を救おうということです。それは個人が最低限の生活をできるように、そのような世界の仕組みを作ろうということです。そのような世界の仕組みということは、すなわちそのような仕組みを国家が持つ世界ということです。