キハラハント愛の徒然日記

国連平和維持活動、国際人権法、国際人道法、法の支配、治安部門改革の分野で活動するキハラハント愛のブログです。

2018年02月

3月8日 国連事務次長補(戦略調整担当)ホスチャイルド氏講演会

Fabrizio seminar final-1
来る3月8日、東京大学「人間の安全保障」プログラムにて、国連事務次長補(戦略調整担当)のFabrizio Hochschild氏の講演会をホストいたします。

Fabrizio氏はUN-OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)時代の私の上司でもありますが、UNHCR、UNDP、UNRWA、平和活動の現場など、様々な人道・人権・平和(維持、構築)の分野を得て、今、この混迷する世界において国連の戦略調整という職務を担当するFabrizio氏に、日本が力を入れる「人間の安全保障」と国連、その展望を伺える良い機会だと思い、本講演会を担当しています。

3月8日、13:00-14:20、一般公開です。皆さんお誘いあわせの上、ぜひどうぞ。

初心に帰る

紛争地で自分の家族や友人の命を守ろうと奮闘する

人々は、たくさんの死に囲まれています。

どこに行っても、誰に会っても、

守りたい人を守ろうとする人たちの生き様は壮絶で

心を打たれます。

彼らが失った愛する人たちへの思いと悲しみは

深く果てしなく、

世界のあらゆる不平等、

司法の救済までも不平等に与えられているという状態を

何とかしたいと

学生の頃に思ってから

何度も軌道を修正しながら

人権法の世界に入ってきて、

何ども悲しみに溺れそうになりました。

何かしたいと思っている自分が

溺れてはいけないと思いながら、

悲しみはあまりにも原色で深く、

時に私の世界を包んでしまうこともありました。

 

1999年の住民投票後、

街中が燃える東チモールから避難した際の罪悪感。

毎日果敢にも仕事にやってきた通訳君達が、

投票所に毎日差し入れを持ってきてくれた女性達が、

あらゆる面でサポートしてくれた村長さん以下青年たちが、

皆どこに行ってしまったか分からない中、

私たちは、

正に目の前で燃やされる私の3番目の通訳君の家を背に
防弾車で避難したのです。


あの時の衝撃。

 

避難したらすぐに、

各テレビのニュースに出たこともあり、たくさんの方々から

「あなたは大丈夫?ああ、無事で良かったね。」という

ありがたいご連絡をいただきました。

私の中に、

東チモールは今こうしていても燃えているのに、

国連を信じてあれだけ果敢に全力で住民投票を実現させた住民たちが

どこにいるか分からないのに、

私を含む外国人だけが無事であることへの怒り、

それでも私の安否を喜ぶ人たちへの怒り、

でも結局何もできない無力感と、

何だかんだ言っても避難してきたという耐えられない罪悪感、など、

潰されそうな悲しみが蔓延しました。

 

どうして今頃このようなことを書くかと言うと、

冷静にいなければ対処できないこともたくさんあるけれど、

人生を左右することになった歴史的瞬間や衝撃は

常に自分の中に置いておかなければ

自分が違う方向に行ってしまうと思うからです。

 

国連で人権を担当していた10数年間の間に、

数々の国であまりにたくさんの生と死に向かい合いました。

私の原点にある、

高校生の時に思ったこと:歴史の教科書で何万人が死にました、と書いてある一人一人の人は、どんな人たちだったんだろう。ヘンリー8世の何人もの奥様の話と、戦争で死んでしまった何万人の人たちのお話と、あまりに命の価値が違いすぎるのではないだろうか。

命の価値は皆同じ、

これは人権の、いえ、人間の原点なのに。

 

でも、実際は、命の扱いは平等ではありません。

あまりにも軽い命

あまりにも安い命が

世界中にあります。

 

国連で働いている際に、はっとしたことがありました。

東チモール・リキシャ県で
あまりにもたくさんの虐殺・殺人・レイプなどの事件を扱っていて、

アシスタント君が、

「○○町で事件があり、2人死者が出たようです。」と

プレハブの仮設オフィスの中で報告してくれた、あの朝。

私の中に、即

「あぁ、これは優先順位が低いな。死者2人だけだから。」という気持ちが浮かんだのです。

あ、これはいけない、と思いました。

自分は一人ひとりの命の重さは同じのはずじゃないか、というところが

原点なのに。

忙しさに振り回されて、何を見失ったのだろう。

その後2週間ほどのお休みをいただいて、

一度東チモールの外に出ました。

 

今、私は国連での仕事をいったん離れ、大学の研究・教育職にいます。

これには2つ柱があります。

1つは世界をより良くするのにより効果的に貢献するために、

国連の内部で実務に翻弄し、

幅広く何でもやるけれど

何も深く知ったり研究したりする時間のない状況を脱却し、

より専門的に一つの分野について、

国際社会を変えられる専門的な提言を

世界の中心に向かってできるよう、

自分でやりたいテーマについて、とことん研究したい、という柱。

もう1つが、私のビジョンをシェアできる次世代の学生さんたちを

全力でサポートして

層の厚い仲間を作っていきたいという柱。

この2つの柱は、

全て私の「世界をより平等な場所にして行きたい」というビジョンに

つながらなければいけません。

 

自分が原点に返ることの大切さを感じます。

そう思わせてくれる出会いに感謝します。
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